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遺言・相続(相続手続きの流れ)

  • 目次
  1. 遺言・・・遺言書の意義、自筆証書遺言、公正証書遺言
  2. 相続・・・相続の意義
  3. 相続手続きT・・・自分でできること
  4. 相続手続きU・・・基礎調査
  5. 相続手続きV・・・相続方法の決定、準確定申告
  6. 相続手続きW・・・遺産分割協議、遺産分割協議書作成
  7. 相続手続きX・・・各種相続手続き
  8. 相続手続きY・・・相続税申告

1.遺言

 遺言とは、自分の大切な財産を最も有効かつ有意義に活用してもらうために行う遺言者の意思表示です。この遺言がないために、相続をめぐり親族間で争いが起こることがあります。相続をめぐって骨肉の争い起こすことは避けたいばかりです。
 遺言は、このような争いを防止するため、遺言者自らが自分の遺した財産の帰属を決め、相続をめぐる争いを防止しようとすることに主たる目的があります。

 

 そして、この遺言がない場合は、民法が相続人の相続分を定めていますので、これに従って遺産を分けることになります。このことを法定相続といいます。
 民法は例えば、「子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする」というように、抽象的に相続分の割合を定めているだけなので、遺産の帰属を具体的に決めるためには、相続人全員で遺産分割の協議をして決める必要があります。

 

 しかし、誰しも良い条件を望むであろうし、疎遠な相続人がいることで協議すらできない状況になることもあり、自主的に協議をまとめるのは必ずしも容易ではありません。
 協議がまとまらない場合は、家庭裁判所で調停または審判で解決することになりますが、これも争いが深刻化して解決が困難になるケースがあります。遺言で例えば、「妻に住居とその他遺産を、長男に預貯金〇〇円を、長女に株式全部」といったように具体的に決めておけば、争いを未然に防ぐことができます。

 

 また、法定相続に関する規定は、比較的一般的な家族関係を想定して設けられているので、この規定をそれぞれの具体的な家族関係に当てはめると、相続人間の実質的な公平が図られないという場合も少なくありません。
 例えば法定相続では、子は皆等しく平等の相続分を有しているため、子同士の間でも家業を援助し貢献度の高い子と、素行が悪く不利益ばかりをもたらす子との差はありません。
 これらのことから、遺言者が自分の置かれた家族関係を考慮し、その家族関係に適した相続の仕方を遺言で決めておくことが、後に残された者にとって有益になり、とても大事なことになってきます。

 

 遺言には、遺言者の真意を確実に実現させる必要があるため、厳格な方式が定められています。その方式に従わない遺言はすべて無効です。遺言の方式には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3つの方式が定められています。ここでは、自筆証書遺言公正証書遺言について触れてみます。

 

 まずは自筆証書遺言についてです。自筆証書遺言は、遺言者が紙に自ら遺言の内容の全文を手書きし(目録は手書きでなくてもよい)、かつ日付と氏名を書いて署名の下に押印することにより作成する遺言です。全てを自書する必要があり、パソコンなどによるものは無効です。
 ただし目録については、パソコン等で作成した目録を添付したり、銀行の通帳のコピーや不動産登記事項証明書を目録として添付することができます。もちろん手書きでも構いません。このように自筆証書遺言は自分で書けるので、費用もかからずいつでも書くことができるというメリットがあります。

 

 一方デメリットとしては、自分で書いているがゆえに、その内容が法律的にみて不備があるというケースがあります。後に紛争にまで発展したり、無効になってしまう場合もあります。さらには、内容の訂正の仕方についても厳格なルールが設けられており、これもまた方式不備で無効になってしまうこともあります。

 

 また、自筆証書遺言はその遺言書を発見した者が、必ず家庭裁判所にこれを持参し、その遺言書についての検認手続きを経なければなりません(遺言書保管所(法務局)に申請して保管している場合を除く)。その他にも自筆証書遺言は、これを発見した者が自分にとって不利益な内容だと認識した場合に、破棄、隠匿、改ざんなどの行為をする可能性も否定できません。

 


 

 次は公正証書遺言についてです。公正証書遺言は、遺言者が公証人の面前で遺言の内容を口授し、それに基づいて公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめ、公正証書遺言として作成するものです。上述の自筆証書遺言の様々なデメリットを補う遺言方式といえます。では具体的に公正証書遺言のメリットを見ていきます。

 

 まずは、公証人による最終的な文書の作成が行われるこにより、方式の不備で遺言が無効になる恐れがありません。そして公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続きを経る必要がないので、相続開始後速やかに遺言の内容を実現することができます。
 さらに、原本が必ず公証役場に保管されますので、遺言書が破棄されたり隠匿や改ざんといったことのリスクもありません。これらのことから、公正証書遺言は自筆証書遺言に比べて、安全で確実な方式であるといえるでしょう。

 

 一方デメリットとしては、手続きに一定の時間を要し費用がいくらか必要です。また公証人や証人に遺言の内容を知られるという点が挙げられます。
 しかし、これらのデメリットを踏まえても、安全に確実に遺言を遺すには公正証書遺言をおすすめします。煩雑な手続きや時間を有効に使うために専門家に依頼し、内容についても不備がないかどうかのチェックをしてもらうことで、より安全に確実に遺言書を作成し保管することができることでしょう。

 

 それから公正証書遺言は、確実に秘密を守ることができる遺言でもあります。公正証書遺言は、公証人と遺言者に加え証人二人の立会いのもとに作成されます。公証人には法律上の守秘義務が課せられています。その公証人を補助する書記も職務上知り得た秘密を他に漏らさないことを宣誓して採用されているので、公証人側から秘密が漏れる心配は無用です。

 

 また、証人は遺言者の依頼によりその場に立ち合いますので、遺言者から作成の事実や遺言内容を他に漏らさないように表明した時はもちろん、たとえ明らかな表明はなくても遺言の趣旨に照らし、民法上の秘密保持義務を負うことは明らかです。
 行政書士にも当然守秘義務が課せられています。行政書士法第十二条で「行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなった後も、また同様とする。」と定められていますのでご安心ください。

 


 

 遺言は15歳以上になれば、いつでもできます。遺言は、死期が近づいてからするものだと思っている方もいるようですが、決してそうではありません。遺言の趣旨は、いつ何があっても、残された家族などが困らないように配慮してあげるのが遺言作成の目的です。若い方でも、海外旅行に行く前に遺言作成をするといいたケースも見受けられます。
 つまり遺言は、後に残される家族などに対する思いやりとも言えるでしょう。

 

 遺言についての撤回や訂正は、いつでも何回でもできます。遺言は作成当時に、それが最善と判断して作成した場合でも、その後の家族環境の変化や、自分の気持ちや考えが変わることもあり得ます。また、財産状況が変わるといったケースもあり、そのような場合は、遺言書を書き直したりする必要性が生まれるでしょう。
 このように遺言は、遺言書作成後の諸事情や状況に応じて、いつでも自由に何回でも、撤回や訂正ができるのです。ただし、撤回や訂正は定められた方式に沿って行わなければなりません。


2.相続

 相続とは、亡くなった人が所有していた財産などの権利や義務を、配偶者や子、親族等が承継することをいいます。分かりやすく言い換えると、亡くなった人が持っていた不動産や預貯金などのプラスの財産と、借入金などのマイナスの財産を引き継ぐことをいいます。
 相続においては、亡くなった人を被相続人と呼び、相続を受け継ぐ人を相続人と呼びます。つまり相続とは、被相続人から相続人に財産の承継がなされることをいいます。

 

 次に相続において、何をしなければならないかですが、大きく分けて2つです。ひとつは、財産を承継するにあたり、名義変更をすること、もうひとつは、財産を承継するにあたり、相続税の申告が必要か否かを確認することです。

 

 ではまず、前者の名義変更についてですが、不動産は法務局で登記手続きができ、預貯金は金融機関ごとに手続きが必要になってきます。どちらの手続きも、書面において被相続人からどの相続人へ相続がなされるかを確認したうえでしか、手続きを進めることはできません。ここで必要になるのが、遺言書または遺産分割協議書です。

 

 遺言書は、被相続人が生前に財産の分割に関しての意思表示をした書面のことです。一方、遺産分割協議書は、相続人全員で財産分割に関して、協議をして合意した書面のことです。このいずれかの書面をもって、不動産や預貯金などの名義変更手続きが可能になります。

 


 

 続いて後者の相続税の申告についてですが、まずは申告が必要かどうかの確認を行います。申告が必要かどうかは、所有財産が相続税の基礎控除を超えるかどうかを判定しなければなりません。

 

 相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」になります。例1:相続人が配偶者のみ→「3000万円+600万円×1人=3600万円」で、例2:相続人が配偶者と子2人→「3000万円+600万円×3人=4800万円」となります。

 

 もし、不動産や預貯金などの財産の合計が基礎控除額を超えると、申告が必要になります。申告が必要になった場合は、10ケ月以内に相続税の納税と申告を行わなければなりませんので、申告が必要かどうかの確認は早めにしておきましょう。


3.相続手続きの流れ[T] まずご自身でできること(14日以内)

 それでは、実際どのような手順で相続手続きが行われていくのかを見ていきましょう。
 まずは、被相続人が死亡してから、相続人がご自身で行っていただく手続き(届出)があります。おおよそ、2週間(14日)以内に行うもので、あまり難しいもではありませんので、期限内に済ませてください。

 


 

 7日以内に行うものとしては、死亡診断書の取得死亡届の提出火葬許可証と死体埋葬許可証の取得です。

 

 死亡診断書は、死亡の判定を行った医師が記入し発行します。料金は病院により異なりますが、数千円〜1万円です。事故や突然死の場合は、死亡診断書ではなく、死体検案書が発行されます。こちらの料金は、数万円〜10万円です。死亡診断書や死体検案書の発行に要する費用は、相続税の計算上、控除の対象となりますので、領収証等保管をしておいてください。

 

 死亡届の提出は、死亡診断書(死体検案書)と一体になっている死亡届に記入をして、役所に届出をします。死亡診断書(死体検案書)の内容を確認し、死亡届の届出人の記入欄に、親族や同居人などの限られた人が記入します。これを提出するのは、必ずしも記入者である必要はなく、代理人でも構いません。一般的には葬儀会社が代理することが多いです。
 死亡届が受理されると、戸籍への記載(除籍)及び住民票に死亡の記載がなされます。死亡診断書(死体検案書)及び死亡届は、相続の手続きや生命保険金の請求など、この後の手続きに何度か使用することになるので、原本を役所へ提出する前に、数枚コピーを取っておいてください。

 

 火葬許可証と死体埋葬許可証の取得は、火葬場で火葬したり、墓地等へ埋葬するためのものです。火葬許可証は、死亡届を役所に提出した際に、窓口で発行されます。そのため、こちらも葬儀会社が代理することが多いです。
 その後、火葬が終わると火葬許可証に火葬済み証明印が押されます。これが埋葬許可証となり、墓地や霊園の管理者に提出することになります。

 


 

 10日または14日以内に行うものとしては、年金受給権者死亡届(報告書)の提出です。年金を受け取っていた方が亡くなると、年金受給権死亡届(報告書)を提出しなければなりません。この書類を提出することで、、亡くなった方への年金振り込みが停止します。
 年金受給権死亡届(報告書)の提出は、厚生年金は死亡後10日以内、国民年金は14日以内です。年金事務所窓口へ持参または郵送により提出します。なお、日本年金機構に個人番号(マイナンバー)登録されていれば、届出は不要です。

 


 

 14日以内に行うものとしては、介護保険被保険証の返却・介護保険の資格喪失届の提出世帯主の変更届住民票の抹消届です。

 

 介護保険被保険証の返却・介護保険の資格喪失届の提出は、死亡した方が65歳以上の場合、または40歳以上65歳未満で要介護・要支援支援認定を受けていた場合は、14日以内に介護保険被保険証の返却が必要で、各市区町村役場の介護保険担当窓口に行き、被保険証の返却をすると同時に、介護保険資格喪失届の提出を行うものです。

 

 世帯主の変更届は、故人が世帯主であった場合で、残された世帯員(住民票に一緒に記載されている人)が2名以上いる場合、死亡した日から14日以内に世帯主変更届の提出が必要とされるものです。死亡した方が住んでいた市区町村役場へ提出します。
 ただし、次に世帯主になる方が明確な場合には、世帯主変更届の提出は不要です。例えば、残された世帯員が1人だけの場合や、15歳未満の子どもとその親権者(妻など)の2名の場合などが該当します。

 

 住民票の抹消届は、死亡届の提出により自動的に住民票から抹消されます。期限は14日以内とされていますが、特に手続きや届出は不要です。死亡した方が抹消された住民票は、住民票の除票となります。不動産登記や相続税申告の手続きに必要になる場合があります。

 


 

 14日程度の目安で行うものとしては、公共料金等の名義変更や解約または返却金融機関の口座凍結の連絡遺族年金の手続き生命保険金の請求国民健康保険証の返却・埋葬費等の申請です。

 

 公共料金等の名義変更や解約または返却は、なるべく早めに手続きを済ませた方が良いです。故人名義の銀行口座から公共料金などを自動引き落としにしている場合、故人の口座が凍結されれば料金の引き落としができなくなってしまいます。
 引き落としができないと、水道光熱費や通信サービスが受けられなくなります。電気料金などの請求書や通帳の記録、クレジットカードの明細などを参考にしながら、各機関へ手続きを行います。また、その他解約手続きや返却手続きも併せて行っていきます。

 

 金融機関の口座凍結の連絡は、基本的にこちらから連絡をしない限り凍結されません。死亡届を出したからといって自動的に口座が凍結されることはありません。しかし、故人の預貯金は相続財産であり、死亡した後も口座が凍結されていなければ、通帳などによる引き出しができます。これらのことから、相続人による使い込みなどの懸念があります。そのため、金融機関へ死亡した旨を連絡して口座の凍結をします。
 死亡後、なるべく早めに口座の凍結をした方が良いですが、すぐにしてしまうと各種支払いの手続き等が滞ってしまう場合があるので、タイミングを見計らって行いましょう。ただし、故人に多額の借金などがあり、相続放棄や限定承認を検討しているのであれば、故人の口座から引き出しをすると単純承認をしたことになってしまうので注意してください。

 

 遺族年金の手続きは、死亡してから5年以内に手続きをすれば良いのですが、残された家族の生活費の一部になりますので、なるべく早めに済ませておきましょう。遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者(20歳以上60歳未満の人)、またはすでに年金を受給していた方が死亡した場合に、その方によって生活を支えられていた遺族が受けとることのできる年金です。
 遺族年金の申請手続きや受給できる要件が異なりますので、国民年金加入者の場合は市区町村役場の年金担当窓口へ、厚生年金加入者は加入していた年金事務所へ相談や手続きを行ってください。

 

 生命保険金の請求は、死亡してから3年以内に手続きをすれば良いのですが、残された家族の生活費や葬祭費のために準備をしていることが多いので、こちらも早めに保険会社へ連絡をしておきましょう。また、生命保険金は通常相続財産ではなく、保険契約に基づき受取人が受け取るものであるため、受取人固有の財産として考えます。
 しかし、特別受益になる可能性があることと、税務上はみなし相続財産としての課税の対象になります(生命保険金の全額が相続税の対象になるのではなく、ある一定の金額については非課税にすることが認められています)。よって、相続税の算定に影響を及ぼすことがありますので、できれば他の財産調査と同じタイミングで請求した方が良いです。

 

 国民健康保険証の返却・埋葬費等の申請は、まずは、国民健康保険証の返却をしなければなりません。死亡届を提出すれば、死亡日の翌日付けで国民健康保険の資格は喪失します。速やかに、故人の住所地の市区町村役場の保険年金課へ返却してください。
 そして、その返却をするのと同時に、葬祭費の申請をします。国民健康保険の被保険者が死亡した時に葬儀を行った方に対して、葬儀費用や埋葬費用が助成されます。葬祭費の申請は2年以内ですが、早めに済ませておくと良いです。


4.相続手続きの流れ[U] 基礎調査(目安2〜3ケ月程度)

 基礎調査とは、次の3つのこといいます。相続人調査(相続人の範囲の確定)、相続財産調査(相続財産の範囲と評価の確定)、遺言調査(遺言の有無)の3つです。

 

 この基礎調査から以降の手続きについては、ある程度の法律の知識や経験が必要になってきます。手続きや必要な書類の収集及び作成にも、多くの時間を費やします。相続手続きの流れ[T]で記した内容とは全く異なり、かなり煩雑なものとなってきます。したがって、この基礎調査以降の流れについては、専門家に依頼してみるかどうかの検討が必要になってくるでしょう。

 

 それでは、基礎調査のひとつである相続人調査についてですが、相続手続きとしてまず最初にやるべきことが、この相続人調査です。ご自身で相続人を把握できていると思っていたのに、いざ戸籍を取り寄せたら、会ったこともなく存在すら知らない相続人がいるかもしれません。
 このように戸籍を取り寄せなければ分からなかった、ということが実際にあります。すべての手続きが完了した後で、把握できていない相続人が現れたら、手続きを最初からやり直さなければなりません。

 

 相続人調査で集めるべき書類は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等と、相続人の戸籍謄本等です。注意を要することとして、身分事項である認知と養子縁組は、単純に戸籍を見るだけでは見落としやすいので要注意です。
 また、民法上相続人の範囲の確定での注意事項としては、同時死亡の推定、二重の親子関係の成立、代襲原因、代襲相続人の要件、被代襲者が養子の場合、再代襲、胎児の権利能力、相続人の欠格、相続人の廃除、相続放棄などが挙げられます。

 

 相続手続き進めていく上で、戸籍謄本や相続関係説明図を提示して、その人が間違いなく相続人であることの証明ができなければ、金融機関での預貯金の払い戻しや、不動産の名義変更もできません。したがって、相続人調査は最初にきっちりと行う必要がありますので、戸籍収集を確実に行い、相続関係説明図を作成することになります。

 


 

 次に相続財産調査ですが、故人にどのような財産があったのかを調査します。相続財産となるものは、一般的には不動産(土地・建物)、動産(自動車・機会・美術品など)、債権(売掛金・貸付金など)、現金や預貯金、株式、生命保険金や死亡退職金(被相続人を受け取り人としているもの)などのプラスの財産と、住宅ローン、金融機関からの借入れ、知人友人からの借金などの債務といわれるマイナスの財産があります。

 

 遺産の中に不動産がある場合は、登記簿謄本の他権利証を探します。権利証の表紙には通常、登記済権利証とか、不動産登記権利情報などと記載されています。不動産登記をしていない不動産については、権利証はないので、固定資産税の納税通知書を確認するか、または市区町村役場で名寄帳の写しを取得して確認するという方法があります。

 

 遺産の中に預貯金がある場合には、通帳があればその内容を確認すればよいのですが、最近は通帳のない預金というものがあり、パソコン上にしか記録のない場合があります。このような場合には、パソコンのブックマークを調べたり、口座開設の際の書類がないかを調べる必要があります。口座の存在が明らかになれば、銀行に取引履歴証明書や残高証明書の発行を依頼して内容を明らかにします。

 

 一方、故人に借金があったかどうかを調べる方法としては、まずはキャッシング用のカードがないかを調べます。また、リボ払いにより借入れの支払いをされていれば、毎月の支払いが止まることにより督促状が来るはずです。金融機関からの借入れについては、情報が信用情報機関に登録されます。
 信用情報機関は、全国銀行個人信用情報センター(KSC)、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構(JICC)の3つがあります。これらの信用情報機関で情報の開示請求を行うことで、被相続人の金融機関からの債務を調査することができます。

 

 やがて相続財産調査が完了したら、調査を基に財産目録を作成します。相続財産調査の過程で、財産がどれだけあるのかはっきり分からない場合や、みなし相続財産も加味する必要もありますので、専門家に相談依頼することも視野に入れておきましょう。

 


 

 最後に遺言調査ですが、故人が遺言書を作成していたかどうかを調査します。遺言書はご自身で保管されている場合もありますが、銀行の貸金庫に預けられていたり、遺言により遺産を引き継ぐ方が保管している場合もあります。また、弁護士や行政書士などに預けられていることもあります。
 いずれにしても遺言書がある場合、遺産分割に影響を与えることがあり、その後の相続手続きに関わってくるので、遺言書の有無は早めに調べる必要があります。

 

 遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。遺言書の有無がはっきりしない場合は、どの種類の遺言書であっても、まずは公証役場及び法務局で遺言書の有無を確認してください。公正証書遺言であれば、公証役場に保管されており、内容を確認することができます。秘密証書遺言であれば、遺言書が存在するか否かのみ確認できます。自筆証書遺言であれば、2020年7月1日より自筆証書遺言の法務局での保管制度が施行されたので、まずは法務局で遺言書の有無を確認してください。

 

 もしも自宅などで自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所での検認が必要です。決して、開封してはいけませんので注意してください。検認とは遺言書の存在を確認するものです。家庭裁判所が、相続人などの立会いのもとで遺言書を開封して、その内容を確認する手続きであり、書き換えなどの不正や改ざんを防ぎます。ただし、遺言書の内容が実質的に有効かどうかの確認をするものではありません。


5.相続手続きの流れ[V] 相続方法の決定、準確定申告(3〜4ケ月以内)

 相続方法の決定とは、相続財産の調査結果をもとに、プラスの財産なのかマイナスの財産なのかを確認し、それらを相続するのかしないのかを決めます。
 相続方法としては、単純承認相続放棄限定承認という方法があります。もし、プラスの財産よりも債務の方が多いような場合には、相続の開始を知ってから3ケ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をして受理されれば、最初から相続人ではなかったことになります。

 

 単純承認とは、故人のすべての財産と債務を引き継ぐことです。相続放棄、限定承認をしなければ、必然的に単純承認となります。また、不動産を売却するなど、財産の処分を行った場合も単純承認をしたとみなされます。

 

 相続放棄とは、故人のすべての財産、債務引き継がないことです。一つひとつの財産について放棄するということではなく、相続人の地位をまるごとなくしてしまうという手続きです。つまり、相続人の地位がなくなった相続人は、財産を相続することもできない代わりに、借金を相続させられることもありません。家庭裁判所で手続きしない限り、相続放棄の効果は発生しません。

 

 相続放棄は代襲原因にもならないので、相続放棄をした方に子がいた場合であっても、その子や孫などが代わりに相続人になることはありません。また、相続放棄をした相続人が、初めから相続人ではなかったものとみなされることにより、同順位の相続人は相続分(財産と債務)が増えることになります。
 なお、相続放棄をすることにより、次順位の相続人は相続分(財産と債務)を得ることになります。その状下におかれた場合には、次順位の相続人もまた、相続放棄を行うことは可能です。

 

 限定承認とは、故人のプラスの財産の範囲内で故人の債務も引き継ぐことです。具体的に説明すると、相続財産に2000万円の借金と、自宅の持ち分1000万円があるとします。自宅だけは手放したくないといった時に、限定承認の申し立てを行い、自宅の持ち分相当の借金(1000万円)は債権者に支払うことで、自宅の持ち分1000万円は相続させてもらうという事です。
 なお、限定承認は相続人全員の合意のもと家庭裁判所への申し出が必要です(相続放棄をした相続人を除く)。

 

 相続放棄と限定承認は、いずれも家庭裁判所での手続きが必要なため、これらに関する書類作成及び相談業務については、弁護士や司法書士が取り扱う業務となります。また限定承認は、準確定申告や譲渡所得税の申告が必要になる場合があるので、税理士との連携が必須となります。

 


 

 準確定申告とは、被相続人(故人)の所得税について、相続人が被相続人に代わって申告をすることです。所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し、その所得金額に対する税額を算出して、翌年の2月16日から3月15日までの間に申告することになっています。
 しかし、年の途中で死亡した人の場合は、相続人が1月1日から死亡した日までの所得を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ケ月以内以内に申告しなければなりません。

 

 準確定申告が必要になるケースとしては、個人事業主、給与が2,000万円を超えていた人、不動産を賃貸または売却していた人、給与以外の収入が20万円以上の人、生命保険や損害保険の一時金や満期金を受け取った人、医療費控除の対象となる高額の医療費を支払っていたり、年の途中で退職し年末調整を受けていなくて、準確定申告をして所得税の還付を受けられる人などです。
 なお準確定申告が必要かどうか迷ったときは、早めに税務署や税理士に相談しましょう。


6.相続手続きの流れ[W] 遺産分割協議〜遺産分割協議書作成(目安4〜8ケ月程度)

 遺産分割協議とは、被相続人が遺言書を作成していない場合に、誰がどの財産を相続するのか、どのように分割するのかを相続人全員で協議することをいいます。
 遺産分割協議を行う場合は、共同相続人全員が参加しなくてはなりません。相続人の中に会ったこともない親戚がいたり、あるいは隠し子がいたとしても、それらの人を含めた全員での協議が必要です。

 

 一部の相続人を加えずに協議を行った場合はもちろんですが、協議当時に気付かなかった相続人が協議後に現れた場合や、協議当時は相続人だと思っていた人が、実は相続人ではなかったことが判明した場合などでも、その遺産分割協議は無効になってしまい、あらためて初めから協議を行わなければなりません。
 なお、遺産分割協議がまとまった後でも、相続人全員が合意をすればやり直すことも可能ですが、その場合は余計な税金を支払う必要がありますので注意してください。

 

 全員が遺産分割協議の内容に同意をすることで遺産分割協議は終了しますが、時間の経過により人それぞれの考え方が変わることもあります。今後トラブルに発展して、せっかく全員で行った遺産分割協議が無駄になってしまわないように書面にまとめておく必要があります。この書面のことを遺産分割協議書といいいます。
 この遺産分割協議書は、全員が遺産分割の内容に同意したことを証明する書類になり、相続登記や口座の凍結解除などの手続きで必要になります。代表的な例としては、不動産の名義変更などが挙げられます。

 

 では、遺産分割協議書が必要となるケースについててすが、そもそも遺産分割協議書は、相続が発生したからといって必ずしも作成しなければならないものではなく、作成をしなかったからといって罰則が生じるものでもありません。しかし、次のようなケースでは遺産分割協議書の作成をしておいた方が良いでしょう。

 

遺言書がないケース

これは先ほども少し触れましたが、遺言書がない場合は、誰がどの財産をどれだけ相続するのか、相続人全員で決めなければなりません。協議をして相続人全員が同意しているということが証明できなければ、不動産の相続登記や口座の凍結解除もできない状態になってしまうため、手続き上遺産分割協議書を作成しなければなりません。

 

遺言書の内容とは異なる遺産分割を行うケース

遺言書ですべての財産の相続方法が指定されている場合でも、相続人や受遺者全員がそれとは違った内容で決定したいということであれば、遺言の内容とは異なる遺産分割を行うことができます。このような場合には、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

 

遺言書に記載されていない財産があるケース

遺言書はあるものの、不動産などの一部の財産の相続方法に関することしか記載がなく、その他の預貯金などの財産の相続方法は記載されていないといった場合は、記載されていない財産をどのように相続するのかを協議し、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

 

相続税の申告を行うケース

この相続税の申告を行う場合、それぞれが相続した遺産の価格に応じて、各相続人が負担する相続税額を算出します。そのため、相続税の申告を行う場合は税務署に遺産分割協議書を提示しなければなりません。仮に遺産分割協議書がなかった場合は、実際の相続分に関係なく法定相続分で遺産分割したと仮定し、法定相続分に応じてそれぞれの相続税を算出することになるため注意が必要です。

 

相続税の更正の請求を行うケース

相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらず、配偶者の税額軽減などの特例を利用できなかった等の理由で、本来負担すべき相続税額よりも多く納税した場合、相続税の更正の請求を行うことで払いすぎた税金の還付を受けられます。このときに、特例や実際の相続分に応じて相続税額を算出する必要があるため、遺産分割協議書を提示しなければなりません。

 


 

 一方、遺産分割協議書が必要ないケースについては、法定相続人や受遺者が一人だけの場合や、遺言書の内容通りに相続する場合です。公正証書遺言であれば、そのまま遺産分割協議書の代わりに提示して相続手続きが可能です。自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合も、遺言書に沿って遺産分割するのであれば遺産分割協議書は不要ですが、事前に家庭裁判所で遺言書の検認が必要です(法務局の保管制度利用の場合は除く)。

 

 それから、遺産分割協議の期限についてですが、共同相続人全員で行う遺産分割協議には、法的な期限は設けられていません。つまり、相続が発生して5年や10年経過してから行っても問題ありません。
 しかし、相続が発生してから10年以上も経過すれば、相続人が亡くなるなどで遺産分割協議自体の難易度が上がってしまいます。また何より、相続税の申告時に遺産分割協議書が完成していなければ、本来納税すべき相続税額よりも多く納税することになりかねません。

 

 したがって、相続税の申告期限に間に合うように遺産分割協議書を作成していれば、配偶者の税額軽減などの特例を適用するなど、一時的に多く相続税を納税しなければならないという事態を避けることもできます。そのため、遺産分割協議書の作成に法的な期限は設けられていませんが、相続税の申告期限である「相続の開始を知った日の翌日から10ケ月以内」に作成できるよう協議を行うことをおすすめします。


7.相続手続きの流れ[X] 各種相続手続き(遺産分割協議成立後速やかに)

 各種相続手続きとは、主に不動産金融機関有価証券の相続手続きのことです。遺産分割協議の内容に従って不動産の名義変更(相続登記)や、預貯金の解約手続きや払い戻し手続きを行います。不動産の名義変更は、相続不動産の所在地を管轄する法務局へ登記申請をし、預貯金の解約手続きはそれぞれの金融機関に対して行います。

 

 相続財産の中でも価値が高く分割しづらいのが不動産です。不動産が複数人での共有財産となれば、トラブルや将来的なリスクが高い状態になってしまいます。もし相続登記を放置しておくと、相続関係が複雑化し、解決のための時間や手間、そして費用もかかってしまいます。
 また、時間の経過によって、必要書類の収集や親族の協力が得られにくくなったり、昨今社会問題となっている空きや問題や、所有者不明土地問題などに発展する可能性も出てきますので、相続登記は速やかに行いましょう。

 

 相続登記(不動産)は、不動産の所在を管轄する法務局に必要な書類をそろえて申請しますが、一般的に必要な書類として登記申請書、相続関係説明図、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、その他亡くなった方と相続人との関係を示す戸籍謄本、遺産分割協議書、不動産を相続する方の住民票、被相続人の住民票の除票、固定資産評価証明書などが必要です。 
 また、金融機関の相続手続きと違って、登録免許税という税金がかかります。税額は、固定資産評価証明書や固定資産税納税通知書に記載されている評価額×0,4%になります。これを申請時に法務局で収入印紙に変えて提出します。

 

 上記のような面倒な手続きがあること、登録免許税がかること、また期限が設けられていないことから、不動産の相続手続きは後回しになりがちですが、相続不動産の売買や、金銭借入の際に設定する抵当権設定、そして建物の修復の際に不動産名義が亡くなった方のままだと、各場面で取引や手続きができない事態になってしまいます。

 

 したがって、相続登記を放置を放置をすることで相続人が変わってしまい、思わぬ事態にもなりかねませんので、不動産の相続手続きはその都度行った方が良いです。また、政府の方で相続登記の義務化が検討されていますので、ゆくゆくは不動産の相続手続きが放置されるといったこと事態が無くなってくるかもしれません。

 

相続登記の申請が義務化されます(令和6年4月1日施行)。

 

相続により(遺言による場合を含む)不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない。また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならない。
なお、正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。

 

※正当な理由の例
(1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
(2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
(3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース など


なお、相続登記(不動産の名義変更)は司法書士が行うことになります。

 


 

 金融機関の相続手続きは、被相続人の死亡により凍結された預金口座の名義変更や解約をすることをいいます。被相続人の預貯金は亡くなった時点で相続財産となるので、相続人が勝手に預金を引き出したり、解約することがないように口座が凍結されます。
 つまり、遺産分割協議が合意するまでの間は、相続人単独もしくは一部の相続人たちだけでは払い戻しができません。もし被相続人の預貯金から口座引き落としがあるものは、早めに連絡をして契約の解除や支払い方法の変更を行います。

 

 金融機関口座の凍結解除における必要書類と手順は金融機関によって異なりますが、一般的に必要な書類は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、その他被相続人と相続人の関係を示す戸籍謄本、遺産分割協議書、被相続人の預金通帳、預金証書、キャッシュカード、金融機関所定の書類が必要となります。手続きが無事に確認されると、被相続人の口座の名義変更もしくは解約するかのどちらかを選択することで相続手続きが完了します。

 

 なお、遺産分割前でも相続人の一人が、単独で預金の一部を払い戻すことができるという民法の改正があり、2019年7月1日から利用できるようになっている。払い戻し可能額は、「相続開始時の預金の額×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続割合」です。
 ただし、同一の金融機関からの払い戻し額は、相続人1人につき150万円が上限となっております。払い戻した預金は、払い戻した相続人が相続財産として取得したとみなされ、遺産分割の際に調整されます。

 


 

 有価証券の相続手続きは、被相続人が生前に株式や投資信託を行っていた場合に、証券会社や信託銀行に新たに相続人名義の口座を作ることをいいます。手続きは、金融機関の相続手続きと基本的には同じで、証券会社や信託銀行に亡くなったことの連絡と、相続関係資料の送付をしてもらうことです。

 

 必要書類と手順は証券会社や信託銀行によって異なりますが、一般的に必要な書類は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、その他被相続人と相続人の関係を示す戸籍謄本、遺産分割協議書、証券会社や信託銀行指定の書類が必要となります。

 

 有価証券の相続手続きの特徴は、相続人が被相続人名義の有価証券がある証券会社や信託銀行に口座を作らなければならないことです。相続人が作った口座に被相続人名義の有価証券を移して相続人が保有したり、売却したりすることが可能になります。


8.相続手続きの流れ[Y] 相続税申告(10ケ月以内)

 相続税申告とは、遺産総額が相続税の基礎控除額を超える場合や、相続税の特例等を利用しようとする場合に、相続税の申告をすることをいいます。もっとも遺産総額が相続税の基礎控除額を超えない場合は、特に手続きの必要はありません。
 相続税の申告期間は、被相続人が死亡したこと知った日の翌日から、10ケ月以内に行わなければなりません。

 

 それでは、基礎控除額の算出方法についてですが、「3、000万円+(600万円×法定相続人数)」となっております。例えば、夫が亡くなり妻と子1人で、法定相続人が2人の場合は、3、000万円+(600万円×2)=4、200万円になります。要するに、相続財産が4,200万円を超えない場合には、相続税はかからず申告も不要となります。
 ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例など、相続税の特例を利用する場合は、相続税の申告は必要になります。

 

 相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から起算して、10ケ月以内に行わなければなりません。例えば、1月1日に被相続人が亡くなった場合は、11月1日が申告期限となります。この期限までに申告をしなかった場合は延滞税がかかってきます。なお、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署で申告を行います。

 

 一般的に必要な書類は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、その他被相続と相続人の関係を示す戸籍謄本、遺産分割協議書の写し、評価証明書、不動産登記簿謄本、預貯金や有価証券の残高証明書などの相続財産に関する添付書類があります。

 

遺産分割協議と相続税の申告・納付の関係には注意が必要です。遺産分割協議が完了していれば問題ないのですが、たとえ遺産分割協議が未了であっても相続税の申告と納付が伸びることはなく、相続の開始があったことを知った日の翌日から起算して、10ケ月以内に行わなければなりません。その様な場合には、一旦法定相続分どおりに財産を相続したものとして相続税額を計算し、申告と納付を行うこととなります。

 

 いずれにしても、相続税の納付金額は遺産分割が決まらない限り確定しません。10ケ月の期限はすぐにやってきますから、相続税がかかる又はかかる可能性がある場合は、なるべく早めに相続人間で話し合いを進めて、遺産分割協議を進めてください。なお相続税に関して分からないことがあれば、早めに税務署や税理士に相談しましょう。


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